PHOTO HUB by nikkor club

メンバーズ・トーク

#私とニコン 

彼と最後に会ったのは
病棟の面会室だった
seven stars を燻らせながら 
高校で 写真を撮っていた話を聞いた
普通に歩いてるし たばこも吸ってる 
ジュースも今一緒に飲んでいる 
”どこが悪いん! 
せっかくお見舞いに来たのに!”
というと 
”たばこも少し前から吸っていいと言われたんだ 
それに 病院内での外出も
食べ物も何食べてもいいって
これって おかしくない? 
微熱があるし 
実は白血病で もう助からない てことかも ”
というので 
元気そうだよ! 
もうじき退院ということだろ
早く 下宿に戻ってきて !
と言って 別れたのでした

それから 10日ほどたった夜明け前
なぜかお腹の上辺りを
飛んだり跳ねたりする怖くない金縛りにあった
目覚めは 下宿屋のおばさん
”電話!ゴンゴン!ゴンゴン!”の声
友人からの電話の声と内容で完全に目が覚めたけど
よくわからなかった   
  
その日の御通夜はしめやかに終了し



13回忌のはずのの週末 
花かごを持って再び行ってみた
 
写真の彼は 20代のそのままだった
帰り際 
彼の下宿に吊ってあったのと同じようにある
F1 でも F2 でもない
玄関脇のニコンのカメラが目にとまった
レンズは105mm
いつでも持ち出せるようにと

30回忌 彼の家の名前はもう無かった

あの時の 彼のニコン が
頭のどこかにあって 
使用感でもなんでもなく 触ったこともない
小型の たぶん FM(メカニカル)
105mm付きだったんだ と思う  

 
死の間際なのに 
励ますでも無く 気楽なことしか言わず
うすうす病気を感づいた他の友人たちと違い
度外れて 脳天気だったのかもしれない  
 
もし 彼と会う機会があったなら カメラを
少し自慢ができるかもしれないけど

何しに出てきたん? と確認して
ニコニコしながら 詰問してみたい
 
でも
一期一会なんだよね

あとがき 
 
Dobon さんが 植村直巳の
カメラについて 書かれていたので
マッキンレー 2年後ぐらいの 
学生時代晩期の思い出~を書いてみました
その当時もNikonは高級品のイメージで
無造作に下宿に吊ってあるのには
少し驚き 
1巡り後 埃も無く
同じようにある事へ
強い思いが感じられ 
忘れられず    
金縛りは 睡眠麻痺だろうが
タイミングと いきさつがあるので
3巡りも過ぎているのに
思い出すことがあるのです

2022/04/17 兵庫県豊岡市日高町 
植村直己冒険館前にて 撮影

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1件のコメント (新着順)
makun
2024/07/07 12:00

ご友人との思い出、大切な話を聞かせていただきました。ご友人、強い心を持った優しい方だったのではないでしょうか。
あの世で友人に再会できたとき、自慢できるような人生を送りたいですね。


コメントありがとうございます

時間の経過を入れて 
下手なりの文章にしてみると
忘れていたことが蘇る(偏光彩度を持って)
良い機会となった様です

劣化現物があるだけに 
若い遺影は複雑な見え方でしたが
”何してたん?!”
と逆詰問の切り返しに
苦労しないようにしたいものです