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写真展

ニッコールクラブ会員展 山之内 徹「葦原の鼓動」インタビュー

会場:ニコンプラザ東京 THE GALLERY
会期:2024年6月25日(火)~2024年7月8日(月) 日曜休館
   10:30~18:30(最終日は15:00まで)

ニコンプラザ東京のTHE GALLERYにて、ニッコールクラブ会員の山之内徹さんが写真展を開催されました。6月29日(土)におこなわれたギャラリートークの様子もお伝えします。

今回の写真展開催に至るまでのことについて教えてください。

最初に私が渡良瀬遊水地を訪れたのは2019年の3月です。その時、湿地帯から上がる蒸気を朝陽が赤く染め、夢のような景色が広がっていました。この景色に魅せられ、写真に残したいと思い、繰り返しこの地を訪れるようになりました。

何度も足を運び、撮影を重ねるにしたがって、渡良瀬遊水地の私にとっての魅力が変わってきていることに気付きました。ヨシ焼後の焦土から発芽し、育ち、再び濃密な葦原が出来上がるまでのプロセスをつぶさに観察することで、ヨシ1本1本の命の尊さや成長の逞しさに魅力を見出すようになってきたのです。撮ることを通して、被写体の見方が変わってきたということは、通ったからこそできる表現につながるのではないか、との思いから、作品を展示でまとめたいと思うようになりました。

過去に写真展「森の鼓動」も開催された山之内徹さん
撮影にはどのくらいの時間がかかりましたか?また、どんな機材を使われましたか?

2019年からですから足掛け6年になります。6年間で61回取材に訪れ、約2万2千枚撮影しました。

「葦原の鼓動」は撮影地と被写体を絞り込んでいるので、表現は多様にしたいと、超広角から超望遠、マイクロレンズも使いました。使用カメラはD810、Z6、Z7です。6年間で主に使うカメラが変化してきたためです。レンズは、ZマウントのレンズではNIKKOR Z 14-30mm f/4 S、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、Z TELECONVERTER TC-2.0xを使いました。Fマウントのレンズでは、60mmと105mmのマイクロレンズも使いました。

今回の写真展の作品はどのように選ばれましたか?

写真展の審査に応募する約1年前に、それまでに撮影した写真をすべて見直し、展示候補となる写真約300枚をLサイズにプリントしました。それを床の上に並べて、ああでもない、こうでもないと構成を検討しました。この段階でステートメントを書いてみて、じょじょに展示のコンセプトを固めていきました。さらに1年間撮り足して同様のプロセスを繰り返し、2023年9月に審査に応募しました。念入りに事前検討していたからか、審査は1回で合格しました。

今回の作品制作では特にどの点にこだわりましたか?

3年前に「森の鼓動」のタイトルでニッコールクラブ会員展を開催した際、A2サイズ45点で展示を行いました。展示を見に来てくださったある方から、「できれば何点か大判プリントで見たかった」と言われたのが記憶に残っていました。

そこで今回はB1サイズの大判プリントを4点、A2サイズ31点、A3ノビサイズ6点で構成することにしました。用紙はピクトリコのシルバーラベルプラスに統一し、A2、A3ノビは自宅でプリントし、B1サイズはピクトリコのプリント工房にお願いしました。プリント、レイアウトにも十分こだわりましたので、大勢の方に是非見ていただきたいです。どうぞよろしくお願いします。

「葦原の鼓動」 ギャラリートーク

 

6月29日(土)に開催されたギャラリートークの様子です。

「ヨシ焼き」とは一般的には「野焼き」といわれているもので、遊水地の貴重な湿地環境の保全や病害虫駆除を目的に行われます。山之内さんが初めて渡良瀬遊水地を訪れた時から、週が明ける前にもう1度撮影に行ったことや、コロナの影響でしばらく撮影ができない期間があったことなど、撮影の間の出来事を詳しくお話しいただきました。

「ヨシ焼の燃えカスが体積した地面を歩くと、靴が真っ黒になってしまう。手も靴もカメラも真っ黒にしながら撮影した」とお話しされる山之内さん。美しい景色を撮影する際の苦労も伺えます。

しかし、新芽に霜が下りている様子、植物の生命力や成長を実感し、どんどん撮影にのめり込んでいったそうです。

「写真は狙った通りじゃなくて、狙った以上のものが撮れることがある。運が味方してくれることがあるのが楽しいですね」

長い時間、何度も渡良瀬遊水地に通われた山之内さんは、笑顔でそう語られました。

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