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写真展

第30回酒田市土門拳文化賞受賞作品展 宮崎 豊「新世界に咲く紅い花・コロナ禍を経て」インタビュー

「新世界に咲く紅い花・コロナ禍を経て」で第30回酒田市土門拳文化賞受賞を受賞した宮崎 豊さん。ニッコールクラブではキャッスル大阪支部の支部長を長く務められています。宮崎さんに、今回の作品と写真への取り組みについてお話を伺いました。

第30回酒田市土門拳文化賞を受賞された宮崎豊さん
この度は受賞おめでとうございます。2022年には「なにわ新世界ストーリー・コロナ禍の時代」で奨励賞を受賞されましたね。

ありがとうございます。大阪での万博開催決定を受けてから、新世界にスポットを当てて撮り始めていました。ところがすぐにコロナ禍になってしまい……よりいっそう新世界という場所を重点的に撮るようになっていきました。
その初期に撮ったものが前回の奨励賞をいただいた作品群です。その時はモノクロ、スクエアで新世界の町の風景・風俗やその状況を30点でまとめました。

今回はコロナ禍を経た新世界を、去年の1~12月までに撮影した13点と、今年の1~5月までの約1年半の間に撮影した7点でまとめています。

今回のテーマについて教えてください。

新世界は撮り続けていますが、今回はこれまで撮ってきたものとはテーマがまったく異なり、昨今の社会問題に目を向けています。ジェンダーやLGBTといった性に関する心理の問題が話題になってきており、この新世界にもそうした当事者の方がいらっしゃいまして、お願いをして撮影をさせていただきました。日本の社会的には認知されにくいところがまだまだあると思うのですが、この世界にはそういう方もたくさんいらっしゃるのです。

そうしたことを考えながら、網から飛び出た山茶花の赤い花を見た時に、「抑圧されても赤い花が咲いている」という状況がこの社会問題と重ね合わせられたというか、その事象を象徴する写真だと思えました。テーマには悩んでいたのですが、その花を見た時にすっと、そうした流れので作品にまとめていくイメージができあがりました。

撮影や作品づくりで印象に残っていることはありますか?

新世界のエリアに絞って撮影しましたので、変な撮り方、誤解を招くような撮り方はしないようにとすべて声をかけて、了解を得て撮影をさせていただきました。なるべく路地の方に来ていただいたり、ポーズもお願いするなど協力を得て撮影しています。

前回のモノクロ作品にも写っていただいた方もいます。ずっと撮っていると自然なお付き合いになりますね。DMで使用した写真の方からは、「また写真を撮って欲しいねん」と言われました。

作品づくりとしては、組み方について工夫しています。前回のモノクロは烏の写真に始まり烏の写真に終わる構成にしたのですが、今回は猫に始まり猫に終わるように並べています。写真展を見に来た人が、不思議な世界に入り込んでいくような感じというか、この後どういう展開になっていくんだろうと思わせるような意味合いで配置しました。

撮影を始めた頃のことについて教えてください。

わたしが写真を始めたのは15歳の頃からです。当時、大学生だった兄が写真サークルで活動しており、自宅でフィルムの現像などもしていたので隣で見ていて影響を受けました。最初に手にしたニコンのカメラはF3です。
作品発表は20代の末に写真同好会に入って、グループ展に参加するようになったのがきっかけです。その同好会の仲間がニッコールクラブに入っていて、皆さんが参加している会報フォトコンテストに応募したくてわたしも入会しました。会報の写真が非常に面白かったので、刺激を受けましたね。

その後、第66回ニッコールフォトコンテストではニッコール大賞・長岡賞を受賞されています。

ニッコールフォトコンテストには23年間連続で入賞していたのですが、60歳で仕事を終えてからは表彰式にも毎年出席していました。当時は恵比寿にあるウエスティンホテル東京で開催されていて、毎年懇談会で入賞者の皆さんと顔を合わせていて。常連の方とお話していると「またここで来年も会おうね!」と盛り上がって、自分も頑張るぞ、というモチベーションになっていましたね。

キャッスル大阪支部では支部長をされていますね。

はい。1999年頃に自分で立ち上げました。ニッコールクラブ支部になると、フォトコンテストの一括応募などいろいろと特典を受けられたので、みんなで出すならまとめて出そうということで作ったのがきっかけです。今も毎月例会を開催して、だいたい20人ほどの仲間が参加しています。

これから写真展や作品づくりを志す方に、メッセージをお願いします。

どなたでもいろいろな写真を撮り、発表することができる時代です。しかしながら、いかに見ていただいた方に感動していただくかと考えると、写真の並べ方や見せ方でだいぶ変わってくるのではないかと思っています。

写真に正解はないけれども、いろんな方と意見交換をしたり作品を見せ合ったり、何回もトライすることが大事だと思います。撮った中からどれが良いか選べないという不安や、自分の思い込みもあるので、第三者に見てもらいいろんな意見を聞くというのは本当に大事です。ご感想をいただけると自分も感動しますし、嬉しいですからね。

とにかく感じたものをたくさん撮る。写真には自分が見たものが写ります。自分が見ているものの中に、自分自身の心や考えも写り込むのではと考えています。

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